思考装置についての覚書 – Thinkの物語(18歳以上)

◆自己言及的パラドクスの中で、思考の不可能性を思考し続ける実験的記録


目次

Ⅰ.

僕は考える。 朝、意識が立ち上がる瞬間から、すでに思考は始まっている。いや、夢の中でも僕は考えていたのかもしれない。目覚めと共に忘却される、あの朦朧とした論理の残滓。

「I think I was thinking in my sleep.(眠りの中でも考えていたと思う)」

誰に向けての言葉か。おそらく、僕自身という他者に向けて。

船室の天井に、昨日描いた図式が残っている。思考の構造を可視化しようとした、愚かで美しい試み。円が幾重にも重なり、やがて自己言及的な渦を作り、最後には意味を失って単なる模様となる。

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Ⅱ.

Needが朝食を運んできた。 「必要なものを」と彼は言う。 でも、思考に必要なものとは何だろう。栄養?酸素?それとも、思考する対象そのもの?

「I don’t think I need to eat to think.(考えるために食べる必要はないと思う)」

「でも、食べなければ考えることもできなくなる」

循環。すべては循環している。思考も、存在も、この対話も。

パンを口に運ぶ。咀嚼する間、僕は咀嚼について考えている。メタ認知の無限後退。考えることについて考えることについて考えることについて…

「Think about something else.(他のことを考えろ)」

Needの声が、螺旋を断ち切る。

Ⅲ.

昼、甲板は無人だった。 いや、Beがいた。赤ん坊の姿をした存在の象徴。

「んー…あー…」

言葉以前の音。それでいて、僕の頭に直接響いてくる意味。

『Think… not think… same…』

同じ?考えることと考えないことが?

「I think you’re speaking in paradoxes.(君はパラドクスを語っていると思う)」

Beは微笑んだ。少なくとも、僕にはそう見えた。表情という記号を、微笑みという概念に変換する僕の思考回路が、そう解釈した。

本当に微笑んだのか? それとも、僕が微笑みを見たかっただけなのか?

Ⅳ.

夕刻、鏡の前に立つ。 Level 3で見つけた、あの思考しない自分を映す鏡ではない。普通の鏡だ。

でも、普通の鏡に映る自分は誰だ?

「I think, therefore… what?(我思う、ゆえに…何?)」

デカルトは「我あり」と続けた。でも、その「我」とは何か。思考の主体?それとも、思考そのもの?

鏡の中の自分が、同じように首を傾げる。0.0001秒の遅延。光の速度と、神経伝達の速度と、認識の速度の差異。その間隙に、真の自己が潜んでいるのかもしれない。

Ⅴ.

深夜、ノートに向かう。

『思考について思考することの不可能性について』

タイトルを書いて、ペンが止まる。書くことは思考の外在化だ。でも、外在化した瞬間、それは もう僕の思考ではない。過去の僕の思考の痕跡。

「What do I think I’m doing?(僕は何をしていると思っているのか?)」

書くことで思考を固定しようとしている。流れる川を写真に撮るように。でも、写真に写るのは川ではない。ある瞬間の、水の配置に過ぎない。

それでも書く。書かざるを得ない。思考を共有するために。いや、共有は幻想だ。君が読むのは、僕の思考ではない。君の思考による、僕の言葉の再構築だ。

Ⅵ.

明け方、すべての思索の果てに、単純な真理に辿り着く。

「I think because I think.(僕は考えるから考える)」

トートロジー?そうかもしれない。でも、最も深い真理は往々にしてトートロジーの形を取る。

愛とは愛することであり、 存在とは存在することであり、 思考とは思考することである。

定義の不可能性を受け入れること。それが、perhaps(おそらく)、思考の成熟というものだろう。

「I no longer think I need to understand thinking.(もはや思考を理解する必要はないと思う)」

窓の外、海が白み始めている。 波は考えない。でも、美しい。 僕は考える。それもまた、美しい。

ただ、それだけのことだ。

終章

Blankがドアをノックする。

「Think、朝だよ」

「I was thinking…(考えていたんだ)」

「いつものことだね」

そう、いつものこと。特別ではない、日常。考えることが呼吸のように自然な、僕という存在の日常。

「What do you think we should do today?(今日は何をすべきだと思う?)」

未来へ向かう問い。思考は続く。答えがなくても、いや、答えがないからこそ、beautiful に。

思考の不可能性を抱きしめて、それでも考え続ける。それがThinkという存在の証明。

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