第二部 第2章 消えた祭りの灯ーIdea

◆あらすじ 南の島に到着した一行を待っていたのは、祭り中止の危機。島の問題を探る中、BlankはIdeaという不思議な人形を解放。小さなアイデアが、希望への道筋を示し始める。

目次

Arrival

七日間の航海を終え、船は南の島の港に入った。

青い海、白い砂浜、緑の山々。熱帯の島特有の甘い花の香りが風に乗ってくる。しかし、何かがおかしい。

祭りの気配がどこにもなかった。

色褪せた旗が力なく垂れ下がり、「収穫祭」と書かれた看板が地面に転がっている。港には人影もまばら。石畳には枯れた花びらが散らばり、露店の骨組みだけが寂しく立っている。

SeeI can see something’s wrong(何かおかしいのが見える)」

Seeの瞳が細められる。いつもは見えないものまで見ようとする彼女が、今は明らかな異変を指摘していた。

WatchI’m watching for any signs(何か兆候がないか見張ってる)」

Watchも警戒するような表情で辺りを見回す。

Dance「祭りはどこ?Where’s the festival?(祭りはどこ?)」

踊りながら不安そうに尋ねる。足首の鈴が寂しく鳴る。期待に胸を膨らませていた分、その落胆は大きかった。

I want to dance now!(今すぐ踊りたい!)」

でも、踊る舞台も、見てくれる観客もいない。

Investigation

Hope「まず状況を確認しよう」

GoI’ll go check around!(様子を見に行ってくる!)」

元気よく駆け出すGo

SpeakI’ll speak with the locals(地元の人と話してくる)」

栗色のポニーテールを揺らしながら、Speakが市場の方へ向かう。

AskI’ll ask what happened(何があったか聞いてくる)」

茶色のポニーテールのAskも、質問リストを頭に浮かべながら走っていく。

三人がそれぞれ情報を集めに散っていく間、残ったメンバーは広場へと向かった。

広場に着くと、Questionが落ち着きなく形を変え始めた。

「なんで?なんで祭りがないの?」

4-5歳の女の子の姿で、大きな瞳を潤ませる。

What’s the problem?(何が問題?)」

7歳の男の子に変化し、真剣な表情。

How can we help?(どう助けられる?)」

20代女性の姿になり、実務的な質問。

Why did everyone give up?(なぜみんな諦めた?)」

60代男性の姿で、深い皺を刻んだ顔。

変化を繰り返すQuestionに、島の人々は驚きながらも、その純粋な問いかけに心を開いていく。

やがて、島の長老が重い口を開いた。白髪の老人は、杖をつきながらゆっくりと語り始める。

「音楽家が去り、歌い手は自信を失って姿を消し、衣装は嵐で破れ、舞台は先月の台風で壊れた。灯りの油も尽き、料理人も病に倒れた…」

一つ一つ挙げるたびに、長老の肩が落ちていく。

Questionがさらに踏み込もうとした時——

Leave「俺は離れる時だ」

灰色の髪のLeaveが静かに立ち上がり、Questionの手を取る。

Question「なんで?なんで今?」

Leave「質問には時がある。今は彼らに休息が必要だ」

二人の姿が夕闇に消えていく。Questionの「なんで?」という声だけが、遠くから聞こえてきた。

Confusion

長老の話を聞いて、みんなが顔を見合わせる。

問題があまりにも多すぎた。

CanI can’t make music(音楽は作れない)」

優しい表情のCanが困ったように首を振る。

SeeI can’t see where to look(どこを探せばいいか見えない)」

いつも真実を見抜くSeeも、今回は途方に暮れている。

MakeI can make things, but not clothes(物は作れるけど、服は…)」

手先の器用なMakeも、衣装作りは専門外だった。

DoI want to do it, but how?(やりたいけど、どうやって?)」

いつも即行動のDoも、今回は立ち止まっている。赤い髪が夕日に照らされて、より赤く見える。

WantI want to help, but I can’t cook(手伝いたいけど、料理できない)」

何でも欲しがるWantも、料理の才能は欲しがったことがなかった。

重い沈黙が広場を包む。

Dance「でも…I still want to dance…(それでも踊りたい…)」

止まることなく、小さくステップを踏み続ける。その姿が、余計に切なく見えた。

Discovery

その時、Blankの耳に小さな声が聞こえた。

『こっち…ぼくはここ…』

声は広場の片隅から聞こえてくる。割れた植木鉢の陰、雑草の間に、小さな人形があった。

子供のような姿。右手には小さな種を持ち、頭には若葉の髪飾り。顎に手を当て、考えるようなポーズで固まっている。膝を抱えて座り、まるで何かを思いつこうとしているかのような表情。

『ぼくの名前を呼んで』

『アイデアが…たくさん…』

Blank「Idea

「君の名前はIdeaだ」

名前を呼んだ瞬間——

人形の緑の瞳がぱちりと開く。まるで電球が灯ったような輝き。小さな体が跳ね起きる。

I have an idea!(アイデアがある!)」

くるくると回りながら、周囲に散らばった種を拾い集める。一つ拾うごとに、新しい発想が浮かぶかのように目を輝かせる。

No, wait! I have LOTS of ideas!(待って!アイデアがいっぱいある!)」

種をポケットに詰め込みながら、飛び跳ねる。

Seeds

長老が状況を改めて説明すると、Ideaは目をきらきらと輝かせた。問題が多いほど、彼の瞳は明るくなる。

I have ideas for everything!(全部にアイデアがある!)」

小さな手をぱちんと叩く。その音と共に、みんなの視線が集まる。

Music? Use nature!(音楽?自然を使えば!)Bamboo drums! Shell whistles!(竹の太鼓!貝の笛!)」

「Singing? Everyone has a voice!(歌?みんな声を持ってる!)」

「Costumes? The island has materials!(衣装?島には素材がある!)Leaves! Flowers! Vines!(葉っぱ!花!つる!)」

Stage? Wood and rope!(舞台?木とロープ!)Simple but strong!(シンプルだけど頑丈!)」

「Lights? I have an idea for that too!(灯り?それにもアイデアがある!)」

一つ言うごとに、種を一粒空に投げる。まるで可能性の種を撒いているかのように。

みんなが顔を見合わせる。不可能に思えた問題が、急に解決できそうに思えてきた。

NeedWe need to organize these ideas(これらのアイデアを整理する必要がある)」

手帳を取り出し、素早くメモを取り始める。

WillI will lead a team(チームを率いる)」

決意を込めた声でWillが宣言する。

HopeI hope we can do this(できることを願う)」

希望の光が、Hopeの瞳に宿る。

Division

Ideaが跳ねながら、みんなを見回す。

Let’s split into teams! My idea!(チームに分かれよう!ぼくのアイデア!)」

それぞれのアイデアを形にするために、みんなが動き始める。

Music team!(音楽チーム!)」

WantI want to make sounds!(音を作りたい!)」 GetI’ll get bamboo!(竹を手に入れる!)」 MakeI’ll make instruments!(楽器を作る!)」

「Costume team!(衣装チーム!)」

TakeI’ll take the materials!(素材を集める!)」 HaveI have sewing tools!(裁縫道具を持ってる!)」 GiveI’ll give my help!(手伝いをあげる!)」

Stage team!(舞台チーム!)」

DoI’ll do all the building!(建設は全部やる!)」 CanI can teach how!(やり方を教えられる!)」 KnowI know the structure!(構造を知ってる!)」

Ideaが飛び跳ねながら言う。

My ideas are just starting points!(ぼくのアイデアはきっかけだけ!)You make them real!(みんなが実現させる!)」

DanceI’ll dance to bring everyone together!(みんなをまとめるために踊る!)」

カスタネットを鳴らしながら、各チームの間を踊り回る。

Hope

夕暮れ、それぞれのチームが準備のために散っていく。オレンジ色の空が、海を黄金に染めている。

島の人々も、少しずつ広場に集まってきた。子供たちが興味深そうに見守り、大人たちも希望を持ち始めている。

Ideaは小さな種を一つ、空に投げる。

Every idea starts small(すべてのアイデアは小さく始まる)But grows big!(でも大きく育つ!)」

種は風に乗って、どこかへ飛んでいった。

Blankが頷く。

「明日から、本当の挑戦が始まる」

DreamI dream we can save the festival!(祭りを救えることを夢見る!)」

虹色の髪が夕日に照らされて、七色に輝く。

Name「新しい仲間の名前、Idea。きっと素敵な祭りになる」

祭りまで、あと5日。

小さなアイデアの種が、島全体に希望を芽生えさせ始めていた。


今回のキー表現

問題が山積みでも、一つのアイデアから始まる。VocabDollsの仲間たちは、それぞれの「できること」を持ち寄って、不可能を可能に変えていきます。

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