夕暮れの海で、Goが立ち止まった。
「I don’t want to go…(いきたくない…)」
その声が、物語の中心を貫いた。
Goは「行く」という名前を持つ。
前へ進むこと、動き続けること。
それが、この子のすべてだった。
けれどその日、夕陽の中で初めて言った。
「まだ、帰りたくない。」
Hopeが微笑む。
「あしたも いけるよ。」
その一言で、Goの顔が明るくなる。
「Tomorrow I go again!」
その瞬間、悟った。
“行く”とは、足を動かすことではない。
“また行ける”と信じられることだ。
3歳のGoが「いきたくない」と言えたから、
11歳のGoは「I can’t go…」と立ち止まれた。
15歳のGoは「行くけど、どこにも行かない」と絶望できた。
18歳のGoは「自分は一度も動いていなかった」と問い直せた。
止まることを知った者だけが、
ほんとうに“行く”ことができる。
夕陽が沈む。
Goが振り返る。
「Let’s go.」
その一歩は、明日じゃない。
——帰りたくなかった今日の中に、もうある。
—— 鴉