
朝、Leaveは船を降りた。
いつものように、誰にも告げずに。
灰色の髪。静かな足音。
砂浜を歩くと、振り返った。
自分の足跡が、波に消えていく。
——それが、Leaveの生き方だった。
痕跡を残さない。執着しない。
ただ、前へ。
昼、Haveが探しに来た。
「Why do you always leave without saying?(どうしていつも黙って出かけるの?)」
「Because goodbyes are heavy(さよならは重いから)」
Leaveは海を見つめたまま答えた。
「I don’t want people to wait for me(誰かに待たれたくない)」
Haveが隣に座る。
「You’re afraid to leave someone behind?(誰かを置いていくのが怖いの?)」
Leaveは初めて、Haveの方を向いた。
「I leave before being left(去られる前に、去る)」
夜、船に戻ると、みんなが待っていた。
誰も責めなかった。
ただ、温かい夕食が用意されていた。
Blankが言った。
「Let’s make a leaving ritual(“離れる儀式”を作ろう)」
「You can leave whenever you want(いつ離れてもいい)」
「But leave a sign(でも、印を残して)」
翌朝、Leaveは貝殻を置いて出かけた。
初めて、“離れる”ことに形を与えた。
夕方、船に戻ると、
貝殻の隣に花が置かれていた。
Nameのメッセージ。
「You can leave, we can wait(あなたは去れる、私たちは待てる)」
Leaveは理解した。
「Leaving doesn’t mean loneliness(去ることは、孤独じゃない)」
去ることは、終わりじゃない。
戻れる場所があるから、去れる。
Goが動き、
Comeが呼び、
Stayが守り、
Leaveが還る。
その四つが揃って、旅は円になる。
——去る者だけが知っている。
——帰る場所の尊さを。
—— 鴉