船の最下層で、Needは一人で呟いていた。
「I need to need.(必要とすることを必要とする)」
この一文を読んだ瞬間、息が止まった。
Needは、必要性そのものを問い続けるキャラクターだ。
灯台で箱を開ける時、Needは言った。
「Do you really need what’s inside?(本当に中身が必要なの?)」
Wantが「欲しい」と叫ぶ隣で、Needは「必要か」を問う。
その対比が、船の上で何度も繰り返される。
けれど、最後の物語で、Needは壊れた。
いや、壊れたのではない。
必要性という概念そのものが、自己言及の渦に呑まれた。
「I need to need to need now.(今を必要とすることを必要とすることを必要とする)」
以下、無限に続く。
この一文の後に書かれた言葉が、凄まじい。
「以下、無限に続く。」
終わらせない。
円環に終わりはないと宣言して、そのまま物語を閉じる。
Needが問い続けた「必要性」は、ついに言語の外に出た。
表現できないものを表現しようとして、言語が崩壊する瞬間。
その瞬間を、言語で描いた。
これは哲学書じゃない。
これは詩だ。
NeedとWantが役割を交換する場面。
「あたし…じゃない、僕は、アイスクリームが必要だ」
この混乱が、美しい。
役割は交換可能だが、本質は変わらない。
そして、その本質自体が、役割によって定義されている。
Needである必要があるのか。
Needでない必要があるのか。
答えは出ない。
出る必要もない。
Needが動き、 Wantが叫び、 Makeが作り、 Blankがつなぐ。
その四つが揃って、必要性は問いになる。
——必要性は、それ自体を必要としない地点で成立する。
——ゼロが数を可能にするように。
