川沿いを下り始めてから、どれほど経っただろう。
季節が移ろい始めていた。朝の空気が少しずつ冷たくなり、木々の葉が色づき始める。日が昇り、日が沈む。その繰り返しの中で、少年は一人で生きることを学んでいった。
朝、鳥の声で目を覚ます。 川辺へ下りる道は、昨日より足が覚えていて、濡れた石の位置も、掴みやすい木の根も、体が自然に避けたり使ったりするようになっていた。顔を洗い、Canが教えてくれた紫の実を探す。
枝を削って釣竿を作る。Restがやったように、急がず、でも確実に。魚がかかれば、すぐに引き上げる。「Just do it」——Doの声が聞こえる気がした。
火を起こすときは、Journeyの手つきを思い出す。風向きを読み、枝の組み方を工夫する。一発で火がつくようになった。
夜は星を見上げる。 雲の向こうにも太陽があるように、見えないところにも希望はある——Hopeの言葉が胸に響く。
ある朝、大雨に見舞われた。 川は見る間に増水し、濁流となって轟音を立てる。
枝と葉で簡単な屋根を作り、じっと待つ。 湖畔の静けさを心に置いて、ただ雨の音を聞いていた。Selfが言っていた——ここにいるだけで充分、と。
三日後、雨は上がった。 空に虹が架かり、鳥たちが一斉に鳴き始める。 新しい世界が、雨に洗われて輝いていた。
肩の革袋が歩みと一緒に揺れる。 その重みは、前へ押す手のひらだ。
一歩踏み出すたびに、何かを得ている気がした。 道も、経験も、すべて足の下に積み重なっていく。Getが言っていた通りに。
時には立ち止まり、できることを確認する。 食べられる実を見分け、火を起こし、魚を釣る。「You can」——Canの優しい声が聞こえる。
ある日、大きな獣と出会った。 熊だろうか。お互いに見つめ合い、緊張が走る。 でも、少年は逃げなかった。ゆっくりと後ずさりし、目を逸らさず、やがて獣の方が森へ消えていった。
いつの間にか、恐怖を乗り越える術を身につけていた。
川幅は少しずつ広がっていく。 流れはゆるやかになり、両岸は遠くなる。
そんな日々を重ねるうち、森が途切れた。
風に混じって、初めて嗅ぐ匂いがした。 塩の匂い。潮の香り。
最後の丘を越えると——
そこに、海があった。
見渡す限りの水。地平線まで続く青。 波が寄せては返し、白い泡を残していく。永遠に続く、海の呼吸。
少年は立ち尽くした。 ここが、地図の端。 すべての川が行き着く場所。
でも同時に、ここで道は終わるのか、という不安も湧いてきた。
これまでの旅が、走馬灯のように頭を巡る。 倉庫での出会い、森への道、山越え、湖畔の静寂、川の流れ。
すべてがこの海へと続いていた。 そして今、少年はここに立っている。
一人で、でも一人じゃない。