第2章 Get ―道を手に入れる

道は二つに分かれていた。

倉庫を出て半日ほど歩いたところで、少年は立ち止まった。足元の草は両方の道に同じように踏まれ、どちらも使われている証拠だった。

黄ばんだ地図を広げる。線は擦れて薄く、東も西も判然としない。森への道筋らしき印はあるが、目の前の分かれ道のどちらが正しいのか。Haveがくれた地図も、完璧ではなかった。

風が吹き、草が波のように揺れる。右の道は少し上り坂で、木々の影が濃い。左の道は平坦だが、遠くで曲がっていて先が見えない。

迷っているうちに日が傾き始めた。このまま立ち尽くしていても、何も変わらない。でも、間違った道を選べば、森にたどり着けないかもしれない。

道標の根元に、小さな人形が横たわっていた。 片手を前に伸ばし、何かを指し示すような格好で固まっている。苔むした石の間に埋もれるように置かれ、長い時間ここにいたことが分かる。

「……ぼくの名前を呼んで」

声が胸に響く。少年は静かに答えた。

Get

光が走り、少年と同じくらいの男の子が立ち上がった。 短い黒髪、きりっとした目。すぐに地図を覗き込み、それから太陽を見上げた。

「どこへ行きたいの?」

無駄のない、まっすぐな声だった。

少年は地図の森を指さした。

Getは頷き、影の向きを確かめ、風の流れを読んだ。それから迷いなく東の道を指さす。

Let’s get there.」(そこへ行こう)

「この道。間違いない」

彼は一歩踏み出し、振り返った。

Get to the forest, then get some food.」(森に着いて、それから食べ物を手に入れる)

Getの言葉は短いが、不思議な確信に満ちていた。

「歩くことは、手に入れること。道も、場所も、経験も、全部。一歩ごとに、何かを得ている」

少年が頷くと、Getは小さく微笑んだ。

「道に迷ったら、また選べばいい。Get another way.」(別の道を手に入れる)「でも今は、この道。You’ll get there.」(きっと着くよ)

光と共に消える直前、もう一度東を指さした。その指の先に、確かに森の気配を感じた。

少年は革袋を背負い直し、東の道へ足を向けた。 一歩、また一歩。 歩くたびに、森が近づいてくる。夕暮れ時、木々の匂いが風に混じり始めた。Getが示した道は、正しかった。

森の入り口に立ったとき、少年は振り返った。 分かれ道はもう見えないが、ここまでの道のりが、確かに自分のものになっている。

Get——手に入れること。 それは物だけでなく、道も、場所も、すべて。

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